自動車技術会春季大会 寄稿 第2回 支援系企業編

2018.09.01

自動車業界における支援系企業の存在

自動車技術会春季大会寄稿の第2回は支援系企業編です。製造業を支援し、計測技術やシミュレーション等の解析技術を提供する企業群です。ちなみに、自動車技術展(人とくるまのテクノロジー展)では、400強の展示ブースの中で約半分を支援系企業が占め、自動車を含む製造業が多くの企業に支えられていることがわかります。

近年の注目技術「MBD(モデルベース開発)」

最近の注目技術の一つは、MBD(モデルベース開発)です。1DCAE(1次元シミュレーション)によるモデルを活用した新たな開発手法で、開発現場に急速に浸透すると共に、制御系からハード系への拡大も着実に進んでいます。この数年、MBDに関連する学術講演も増え、MBDを展示ブースに掲げる企業が増えてきました。企画段階で目標達成度を定量的に予測でき、さらに設計段階で最適化(軽量化等)も可能になる等、ハードも含めて開発のフロントローディングの決め手となる手法で、今後の拡大が期待されます。

ハード系MBDと企画CAE

ハード系MBDについては、企画段階で一部システムにおいて本格活用が始まっていますが、車両全体への適用には少し時間がかかりそうです。設計段階での試行は数年前からで、適用事例も少なく本格活用が強く望まれます。今後は設計作図前の企画CAEがより重要になってきます。MBDによりシステム機能設計を導入することで、設計諸元の最適化を行うと共に設計根拠を明確にする一助ともなります。

日本のものづくりの強みと弱み

MBDは開発ツールというよりも開発プロセスであり、その守備範囲は広く、全体を支援できる企業は一部の海外企業であり、しかも制御系を主体としています。自動車会社も部品製造会社も多忙を極め、自社だけで各種ツールを組み合わせてプロセスを構築できる企業は少なく、ハード系も含めてワンストップで手法およびプロセスの構築を支援できる企業が今すぐにでも必要でしょう。

ちなみに、MBDについては海外発の手法であり、各種シミュレーションツール等も海外製が多く日本製は少ないようです。日本は現場のものづくり等(「ハードパワー」)は強いのですが、コンセプトやソフトウェア等(「ソフトパワー」)は弱いことが個人的に大変気になっています。ものづくりはベテランのリタイアやアジア勢のキャッチアップもあり、今後は安心できない状況ですし、「ソフトパワー」は一般的には付加価値(利益)も高く、日本勢の頑張りに期待したいと思います。

なお、シミュレーション等を販売する企業の多くはツール販売が主体で、製造業の困り事を解決支援するソリューションサービスが十分にはできていないことが大変残念です。ツールはあくまでも手段であり、製造業をより深く理解して、本来の目的である現場ニーズに応え、製造業にパートナーとして長期的に寄り添う企業が成長していくものと思われます。

ドライブシミュレーターから見る、計測技術の進化

MBDにも関連しますが、自動運転等を支援するドライブシミュレーターの展示が増えています。運転席を模擬してインパネ・ハンドル・ペダル等の部品が装着されたシステムです。企画段階でシミュレーターを活用することで、音振動等を模擬体験できる等、開発のフロントローディングが実現するでしょう。

MBDに不可欠な検証プロセスを支えるためにも、地味ではありますが計測技術が着実に進化しています。各種センサー類やトランジェントベンチ等、多岐に渡り新規の計測技術が展示されていました。計測は全ての出発点であり、かつて先輩には「計測できないものは進化しない」と、その重要性を教えられました。欲を言えば、支援系企業にはバーチャル系(予測)とリアル系(検証)の両方ができる技術完結を期待したいところです。

自動運転に代表されるように、現代は社会や技術の変化が加速し、従来の技術や手法が急速に陳腐化していく時代です。かつてはアナログからデジタルに変わり、日本を代表する大企業が勢いを失ったこともありました。生存競争と同じで、「強い者ではなく、変わる者が生き残る」ということでしょう。時代に取り残れないように真の変化を見極め、過去の成功体験に甘んじず、前向きに変化はチャンスととらえて、自ら迅速に変わっていく必要があります。

変革期の勝ち残り戦略

時代の変革期には取組むべきことはあまりにも多いので、資源分散・戦線拡張は避けて、自社の強みを生かした選択と集中で勝ち残る戦略も必要でしょう。自社で取組む中核(競争領域)と外部に任せる周辺(非競争領域)を分けることも重要になってきます。

また、個人も企業も同じで、変化に適応するために学び直す必要もあるかと思います。皆さんも日々の業務で大変かとは思いますが、アンテナの感度を上げ、焦らず一歩ずつ着実に前に進んでいきましょう。