次世代ハードウェア設計プロセス第8回 冷却系の設計

2020.03.03

第8回は、冷却系と主要構成部品について、ハードウェアの技術ポイントや設計手法を解説します。エンジンを冷却するだけでなく、車両全体の熱マネージメントシステムに組み込まれて、燃費向上を目的に全体最適化されるようになってきました。

 冷却系の基本機能は、燃焼室周辺を冷却するとともに、エンジン内部を適切な温度に制御することです。高温時には、ノッキング等の異常燃焼によるピストン等の損傷、潤滑油膜切れによる摺動部の焼付き等が発生する恐れがありますので確実な冷却が必要です。低温時には、燃焼が悪化するとともに潤滑油の粘性が高くフリクション(機械損失)も増加し、エンジン熱効率が大幅に低下しますので、暖機を早める必要があります。

 エンジンの冷却方式は水冷と空冷の2種類があり、現在は、四輪では水冷、二輪では空冷が主流です。水冷方式は、空冷方式と比較して冷却性や温度制御性が良好で、出力、燃費、耐久信頼性、静粛性等に有利ですが、部品点数が増え制御も必要となり、システムが複雑化して重量増加にもつながり、メンテナンスも必要となります。

 水冷方式では、クーラント(冷却液)の流れは、ラジエーターで放熱後に、高温となるシリンダーヘッドを冷却し、シリンダーブロックを経てラジエーターに戻る回路が基本です。技術ポイントは、シリンダーヘッドの燃焼室周りにはウォータージャケットを微細に配置して冷却性を高めるとともに、燃焼を安定化させるため全燃焼室を均一に冷却することです。そのため、ヘッド内を直角方向に流すタイプも採用されています。

 冷却回路は、クーラントの沸騰や酸化を抑制するためにエアーを抜き加圧されます。また、運転中は液温上昇によりクーラントが膨張するため、オーバーフロー分を調整するリザーブタンクが設置されます。タンク内は気液混相のため、車両挙動の影響でスロッシング(液面の揺動)が発生し、タンク破損等に至る恐れがありますので、液面挙動をシミュレーションで予測し、適切な設計をすることが求められます。

①ウォーターポンプ

 機能は、必要なクーラントを冷却回路に供給することです。構造は、流量が多い渦巻型が一般的で、渦巻き羽根(インペラー)を用いて、遠心力により半径方向にクーラントを吐出します。圧力損失を高めないように、ポンプ周辺回路の屈曲や容積変化を減らす設計が重要です。なお、インペラーは、板金または樹脂で成形されます。

 駆動方式は、補機駆動ベルトを用いるタイプが主流ですが、最近では、ハイブリッド車を中心に電動タイプが採用されています。レイアウト自由度が高く、運転条件に合わせて流量を最適化でき、駆動損失を低減することも可能です。

 クーラント漏れを防止するため、駆動プーリーのベアリングとインペラーの間にメカニカルシールを配置します。摺動部には炭化ケイ素やカーボンを使用し、摺動面に薄い液膜を維持してシールします。ベアリングへの液侵入を防ぐために、水や水蒸気を抜くためのドレーン穴を設置する必要があります。

②ラジエーター

 機能は、クーラントにより回収した熱を外部に放出することです。構造は、クーラントを通す多数のチューブに薄い放熱フィンを設置し、上下のコアを介してクーラントタンクにチューブを接続します。軽量化やリサイクル性のため、チューブ・フィン・コアはアルミ製で、タンクは樹脂製が一般的です。
  
 ラジエーターには、放熱性向上のため冷却ファンが設置されます。機械駆動タイプと電気駆動タイプがあり、乗用車では動力低減効果のある電気駆動タイプが主流です。ファンはエンジンルームの前部に設置され、前後の送風抵抗により性能が大きな影響を受けるため、ルーム内の部品レイアウトや通風特性と合わせて設計する必要があります。

③サーモスタット

 機能は、クーラントの温度制御です。クーラント温度が上昇するとサーモバルブを開き、ラジエーターへクーラントを流し放熱します。構造は、封入されたワックスが溶融することで熱膨張し、回路のバルブを開閉させるワックスタイプが一般的です。最近は、制御性を高めるために電気ヒーター付きタイプ(ヒーターでワックスを溶融)や電動タイプ(モーターでバルブを駆動)の採用が増えてきました。

 設置場所は、エンジンのクーラント入口(入口制御)、または出口(出口制御)の2種類があります。冷却性向上のため、バルブを2個使用するバイパスタイプ(ラジエーター通路とバイパス通路の両方の流量を制御)が広く採用されています。

④クーラント

 水冷方式では、冷媒としてLLC(Long Life Coolant)を使用します。求められる機能は、不凍性、防食性(対金属)等があり、エチレングリコールをベースとし、水や各種添加剤を加えたタイプが使用されます。最近は、交換頻度を減らすため長寿命タイプのLLCが採用されています。

 次回は、吸排気系と主要構成部品について解説します。エンジンの出力性能や排ガス性能を左右する重要なシステムです。