MBD/MBSEにたどり着くまで第12回 シリーズ総括 設計プロセス革新

2019.05.07

新たな時代に相応しい革新

最終回は本シリーズの総括として、皆さんに是非お伝えしたいことがあります。すなわち、変革の時代は従来の延長である積上げ的な改善では限界があり、従来に無い飛躍的な革新が必要になるということです。日本の強みは現場の改善力ですが、裏を返せば弱みは対極の革新力です。

繰り返しになりますが、グローバル競争の激化や次世代技術開発の加速等、現在は時代の変革期です。改善の繰返しでは将来も生き残れる保証はもはや無くなり、革新が求められる時代になりました。技術、商品、開発プロセス等、いずれも新たな時代に相応しい姿に変えていく必要があります。時代に先駆けて必要な革新を実現した企業こそが、将来に渡って成長していくはずです。

革新の原動力は夢です。目指すべき理想であり、従来に無い高い目標が必要です。高い目標に真摯に向き合うことで、従来に無い発想や解決策が生まれ、ひいては革新につながっていきます。

理想が無ければ問題意識も生まれず、具体的な行動も起きません。問題とは理想と現実のギャップです。理想の姿を明確に持ち、現実をつぶさに観察することで問題が見え、問題解決のための課題群も明らかになってきます。課題が整理されれば、具体的な行動につながるのです。現状からの積上げである改善だけでは、革新につながる潜在的な問題は見えにくいものです。

革新を生み出すための必要条件

革新を生み出すためには、適切なマネジメントと十分な開発資源が必要条件になります。

まず、革新マネジメントに慣れたリーダーが不可欠です。未知未踏の世界であり、しかも目標を達成する保証が無い中で、組織やチームのモチベーションを維持しながら、柔軟な思考で新たな発想や手法を生み出し、結果を出せるキーマンです。現場に価値を理解させ、粘り強く上司を説得し、会社を動かす志や力量も必要になります。私は、キーマン不在で革新に成功した事例を知りません。適任者が不在なら、敢えて自ら手を挙げて同志を募ることも考えましょう。

次に実務を推進する開発資源が必要です。中でも最も重要な資源は技術者であり、現場では常に不足しています。選択と集中により業務をコアとノンコアに仕分け、外部でできることは外部に委託し、コアに人材を集中しましょう。一般的に、欧米と比較して日本は重点志向が苦手です。社内で満遍なく取組むと資源が分散し、成果も中途半端になる恐れがあります。革新のためには捨てる勇気も必要なのです。

革新の企画・実行

キーマンと資源等の準備に目途が付いたら、実施段階に移行します。

企画段階では、視点を高くして問題や課題の全体像を見直しましょう。問題そのものや解決に向けた課題が変わることがあります。さらに、視野を広くして関連部門全体を見渡しましょう。自部門だけでは解決できない場合もありますし、自部門だけで対応すると部分最適になる可能性もあります。

また、表面的な対策ではなく、ナゼナゼを繰り返して根本原因を発見し、本質的な対策を取ることも重要です。異なるように見える課題でも、深掘りすると共通の原因が存在することがあるのです。

実行段階では“小さく生んで大きく育てる”ことが重要です。身近で取組みやすい小さな題材で試行して適切な方法論を学び、成功体験を組織で共有し現場の理解を得てから本格展開しましょう。結果として従来手法や技術等を否定することになる可能性もあり、慎重に進めたいものです。

革新は一朝一夕では実現できず、中長期的に継続することが必要です。継続は力です。PDCAを回しながら中断することなく続けましょう。社内だけで推進すると諸事情で停滞してしまうこともありますので、外部の力を活用することも現実的な継続策となります。必要があれば、私も微力ながら皆様をご支援したいと思います。

革新は高いハードルですが、企業の成長だけでなく自己の成長にもつながります。皆様には、目先の開発案件等に流されることなく立ち止まって考え続け、勇気をもって正面から向き合うことを期待しています。
今後は、設計出身者として、目指す姿の一つである自動設計についても考えてみたいと思います。

 

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