技術協力|世界初の遠隔触診システムで医師が的確に診断
プログレス・テクノロジーズは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)が進める「人工知能活用による革新的リモート技術開発事業」(以下、本事業)における、仮想空間での人同士の接触を利用した遠隔触診システムの実現に向けて共にプロジェクトに取り組み、本システム内の一部である「Haptic I/O Doll(ハプティック・アイオー・ドール)」の開発全般を担当いたしました。

目次
医師が的確に診断できる、世界初の「遠隔触診システム」とは
開発の背景
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、オンラインシステムが急激に浸透した一方で、「リモートでできること」「直接会わなければ成立しないこと」の境界線が明確になりました。これは医療分野でも通じるところがあり、遠隔診療においては利便性があるものの「触診」が直接できないため、診断の正確性に課題がありました。 NEDOはこうした背景を受け、「人工知能(AI)活用による革新的リモート技術開発プロジェクト」の一環として、21~24年度にかけて、豊田合成株式会社・名古屋大学を中心に当社を含めたプロジェクトチームで遠隔触診システムの開発に取り組んできました。
遠隔触診システムの特長
本システムは、仮想空間での「人と人同士の接触」を再現し、医師が的確に遠隔触診できることが特長であり、触覚情報だけでなく、触れ合いによる心理的効果も考慮した「Contact Reality」(CR)※という概念に基づいて構築されています。 患者と対話しながら直接患部に触れるために医師と患者の間に信頼感が生まれ、遠隔でも効果的な診療を実現できるようになりました。
*Contact Reality(CR):人同士が触れ合うことにより起こる心理的な効果をも考慮に入れた、人同士の仮想空間での接触再現のこと
遠隔触診システムの概要
■ 触診時

■ 診察・対話時

本システムは、医師側に設置されたダミー上腕「Haptic I/O Doll」に対する医師の触診位置・圧力情報がそのまま遠隔地の患者側に設置されたロボット「触診マニピュレータ」に伝送・反映され、医師と同じ動きで遠隔触診を行うことができる仕組みです。さらに、これに仮想空間を組み合わせることで、実際その場で診察をしているようにコミュニケーションを図ることが可能になります。
当社の技術協力について
「Haptic I/O Doll」の開発全般を担当しました
兼ねてより様々な共同プロジェクトを行ってきた豊田合成様に、「0から考えてモノを作る」といった当社のものづくりに対する考えや技術力を評価いただき、今回のプロジェクトに参画いたしました。
当社は医師側が用いる重要パーツであるダミー上腕「Haptic I/O Doll」の開発全般を担当し、設計・素材選定を含めた実制作から、「Haptic I/O Doll」の動作・触診データ送信に関わるシステム領域(サーバ構築・ソフトウェア設計・回路設計・センサー・電源まわり)まで幅広く担当いたしました。
「Haptic I/O Doll」の特徴
「Haptic I/O Doll」は、外側の見た目だけではなく、内部組織・皮膚・体温の再現によるリアルな触感が特徴です。
まず3Dプリンターで作った人の骨格に対し、筋肉や血管、腱、脂肪の代替素材を一つ一つ検証して取付け、その上を導電性の糸でできたアームカバーで覆ってから人工皮膚を巻き付けることで、触感を損なわずに人肌のぬくもりを再現することに成功。「ほぼ生体」に近づけることができました。
そのためデモンストレーション時には「触感だけではなく、触診時に重要視される部分の骨や腱の位置がここまでリアルに再現されているドールは見たことがない」「肘の曲げ伸ばしの動き方や、骨が回旋する動き(回外・回内動作)も忠実に再現できている」と多くの現役医師に評価いただきました。



シンポジウム参加の様子
2024年1月に米国ラスベガスで開催された「CES2024」や、2025年3月にシンガポールで開催された「国際シンポジウム」における国境を越えた遠隔診療の実証実験にも同行し、来場者への質問にも対応いたしました。


当社は、新しい製品・サービスのアイデアを実現するための、最先端のデジタル技術を活用した「未来のモノづくり」を、お客様と一緒に研究・開発いたします。
ものづくり革新や新製品開発に挑戦するためのパートナーをお探しでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
参考情報
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)紹介ページ
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101810.html
Contact Realityの実現による遠隔触診システム開発(NEDO公式Youtube)